大判例

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東京地方裁判所 昭和38年(ワ)223号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔事実と争点〕原告は昭和三四年三月一一日被告三和不動産株式会社との間に土地家屋の交換契約をしたが、その際交換の結果原告に賦課さるべき譲渡所得税はすべて被告会社において負担し、原告に迷惑をかけない旨の契約が成立し、当時税額が不明であつたので、とりあえず将来原告に賦課される税に充当する目的で被告会社は同年三月一四日金一五〇万円を株式会社住友銀行銀座支店に普通預金として預入れ、その預金名義人を原告、被告会社及び立合人たる被告吉野の三者とし、預金通帳は原告が保管する旨の約定が成立し、被告会社は約定に従い三者の名義で預金をし、預金通帳は原告に交付された。その後税額が決定したので原告は約定に従い、その支払いを被告会社に求めたところ、被告会社代表者は言を左右にして、原告が前記預金をもつて税金に充当するための被告らに対し預金払戻請求書に捺印することを要求したがこれを拒否するので、原告は被告らに対し原告に協力して同銀行に対し右預金の元利金の払戻手続を求めると述べた。

被告らは原告主張の契約の事実を否認し、仮定抗弁としてつぎのとおり主張した。

1 被告会社が税を負担する旨の約定は、原告が国民として当然負うべき納税の義務を被告会社に転嫁させるものであつて、これは憲法に規定する納税義務を回避するものであるから公序良俗に違反し無効である。

2 又本件契約は原告が納税義務に違反しないことを条件として被告会社に税金に相当する金員の給付を求める契約であるから、不法行為をなさざることを条件とするもので民法第一三二条後段に違反し無効である。

とかように主張した。

判決は証拠により原告主張のころ原告主張の特約が成立したと認定し、みぎ契約は租税代納契約と解すべきであるとし、国税通則法第四一条を援用してみぎ契約は有効であり、また条件附契約とも認められないとして、被告らの抗弁を排斥した。判決理由はつぎのとおりである。

〔判決理由〕被告らは、租税の代納契約は公序良俗に反すると主張するが、私人間の租税代納契約は、契約の締結によつて直ちに納税義務者の国家に対する義務に消長を来すものではなく、第三者の納税は、国税通則法第四一条によつても認められるところであり、租税の代納契約がそれ丈で公序良俗に反するとは解されないから他に特別の事情の認められない本件ではこの点に関する被告らの抗弁は理由がない。

又被告らは、本件租税代納契約は、不法行為を為さざることを条件とする契約であると主張するが、前掲甲第二号証、同第三号証によれば、本件契約は、原告の租税納付を条件とする契約ではなくて単なる税の代納契約を締結したものと認めるのが相当であり、仮りに原告の納税を条件とするものと解しても、民法第一三二条にいう「不法行為ヲ為サザルヲ以テ……」という条件は、特に厳格に解するのが相当であるところ、租税については、前述の如く代納が許されること、及び一般に税の実質的負担者は形式上の納税義務者ではない場合が多いこと等よりみて、同条にいう「不法行為ヲ為サキルヲ以テ条件トスルモノ」には該当しないものと認められるから、この点に関する被告の抗弁もまた理由がない。(石田哲一)

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